介護や認知症ケアの現場で、
「どうしたらいいんだろう」
と立ち止まってしまう瞬間は
きっと誰にでもあると思います。
大きな事故や明確なトラブルではないけれど、
このままでいいのだろうか
と心のどこかに残る違和感。
今回は、そんな“正解が見えない時間”の中で出会った
香りと、触れるという関わりについて、
実際の体験を書きたいと思います。
認知症ケアのその人仕様ー嗅覚反応分析の見極め力
https://familyhealthmgr.info/ninntisyoyukea-mikiwame/
目次
「落ち着かせる」ことが、本当にその人のためになるのか
以前グループホームで関わった
認知症の入居者さんのことです。
その方は、感情のコントロールが難しくなっていて、
ほんの小さなきっかけで
突然怒り出してしまう状態が続いていました。
周囲の入居者さんに暴言を吐く
机を叩きつける
職員さんが間に入らなければならない
場面が一日に何度もありました。
何がスイッチになって
興奮が始まるかわからないので
職員さんたちはいつも身構えている
ほかの入居者さんたちは
怖がっている、という状況でした。
お医者さんと相談して
鎮静作用のあるお薬が処方されました。
確かに興奮は落ち着きましたが
その代わりに日中の傾眠が目立つようになりました。
・声をかけても反応が鈍い
・以前より表情が乏しい
・日中も机にうつ伏して眠たそう
・その方らしさが遠くなっていくような感覚
施設としても、
「対応しやすさ」を優先することで、
その人の尊厳や生活の質を下げて
しまうことは避けたい
そんな思いがありました。
お薬を減らすと、その方らしさは戻る。
でも同時に、暴言や興奮も増えてしまう。
ちょうどいいところが見つからず、
現場全体が悩んでいました。
こういうジレンマって
どの施設でも抱えているものかもしれないですね。
「アロマを試してみませんか」
当時の私は、すでにある程度
経験を積んでいたので
アロマトリートメントで
気持ちがポジティブな方向に向く
ということが起こることは
なんども経験していました。
でも、施設の方にとっては
初めての試みです。
初めてのことをするときというのは
どうしてもリスクを感じたり
恐さを感じてしまうものです。
入居者さんのことを真剣に考えて
責任感を持って仕事をしておられる
施設長さんならなおさらそうです。
それでも、一度お薬以外の選択肢として
アロマを試してみよう
という話になりました。
嗅覚反応分析を用いて、
作用として「落ち着かせる」もの
と言われる香りの中から、
今の状態に合いそうな精油を選びました。
きっとみんなが期待していたのは、
少し気持ちが落ち着くかもしれない
その程度のものだったとおもいます。
私が訪問した日に、
10分ほどのハンドトリートメントを
行うことになりました。
触れてすぐに、空気が変わった!

その日も朝から、
机を叩く
声を荒げる
他の入居者さんに手が出そうになる
そんな緊張した状態が続いていました。
日中も、
「不満」
「怒り」
「納得できない思い」
そればかりが言葉として出てきていました。
ハンドトリートメントを始めて、
1〜2分ほど経った頃でしょうか。
話の内容が、少しずつ変わっていきました。
・家族を大切に思っていること
・この施設で職員さんに良くしてもらっていること
・昔の穏やかな記憶
表情も、明らかに柔らいでいきました。
香りの選択だけでなく、
触れることで生まれる安心感
皮膚を通した刺激
大切に扱われているという感覚
それらが重なって、
その方の中で何かが切り替わったように感じました。
トリートメントが終わる頃には、
イライラした様子はすっかり
見られなくなっていました。
それどころか、トリートメントが終わって
お部屋に戻る誘導に来られた職員さんに対して
「いつもお世話になっています」
と、深々と頭を下げて
感謝の言葉を口にされました。
トリートメント前には、
「こんなところに閉じ込められて、
何も自由にさせてもらえない!」
と怒っていた方とは、別人のようでした。
その時の職員さんのお顔は
忘れることができません。
驚きと嬉しさで
目をまん丸にしておられました。
でも、とびっきりの笑顔でした。
これは、
アロマの力だったのか
触れたことの結果だったのか
その日の体調や環境が影響したのか
いえ、全部が合わさって
出た結果だと思います。
その後はその時に選んだ
アロマブレンドでスプレーを作り
一日1,2回お部屋にシュッと
スプレーしてもらいました。
すると、その後少しずつ
トリートメントをしていなくても
香りをかぐだけで
イライラが収まり
一か月後にはすっかり穏やかになって
暴言を吐いたりすることは
見られなくなりました。
職員さんの忍耐強い対応と
アロマ+触れるという経験。
いろんなことが重なって
良い結果につながった例だと思います。
使い始めてから、目に見える変化があったことは
事実として職員さんに大きな印象を
与えたようでした。
香りだけではなく、関わりの「重なり」
この経験を通して感じたのは、
香りは単独で何かを起こすものではない、
ということです。
・香り
・触れるという行為
・声のかけ方
・その場の空気
・「あなたを大切に思っている」という無言のメッセージ
それらが重なったときに、
その人の中にある安心や穏やかさが、
少し顔を出すことがあるのかもしれません。
介護や認知症ケアの現場では、
「これが正解です」と言い切れることは
実はあまり多くありません。
それでも、
お薬以外の視点を持つこと
その人らしさを守ろうと立ち止まること
小さな違和感を大切にすること
それ自体が、ケアなのだと思います。
香り+触れるという関わりが、
すべての場合に合うとは限りません。
でも、
「今、目の前のこの人にとって、
何が安心につながるだろう」
そんな問いを持つきっかけには
なるかもしれません。
この記事が、
少し立ち止まって考える時間や、
「それでいいのかもしれない」と思える
余白につながれば嬉しいです。
それではまた、明日このブログ
でお会いできたら嬉しいです。
八木 佳織
同じ行動でも「問題になる人」と「ならない人」
https://familyhealthmgr.info/mondaininaru-naranai/
この記事を読んで、
「うちの施設のあの方に、少し似ているかも」
と感じた部分があれば、
30分ほど、状況を整理するお話もしています。
今すぐ何かを始める前提ではありません。
考えを整理するだけでも大丈夫なので、
必要なタイミングでご相談ください。
https://www.reservestock.jp/pc_reserves_v3/courses/22308?course_id=155161
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【関連記事】
介護現場で「体の反応」をどう捉えるか ― 嗅覚反応分析という、もう一つの見方 ―
https://familyhealthmgr.info/kaigogennba-karadanohannou/
























